あるイヌイットの伝説より
ずっと ずっと大昔
人と動物がともにこの世に住んでいたとき
なりたいと思えば人が動物になれたし
動物が人にもなれた
だから時には人だったり
時には動物だったり
互いに区別はなかったのだ
そしてみんながおなじことばをしゃべっていた
その時そのことばは みな魔法のことばで
人の頭は 不思議な力をもっていた
ぐうぜん口をついて出たことばが
不思議な結果をおこすことがあった
ことばは急に生命をもちだし
人が望んだことがほんとにおこった ーー
したいことを ただ口に出して言えばよかった
なぜそんなことができたのか
だれにも説明できなかった
世界はただ そういうふうになっていたのだ